子育ての“困った”を支えたい
小澤 のり子さん面談可延岡市
延岡市内で保育士として働いた後に専業主婦となった小澤さん。3つ子のママとなって、無我夢中の子育てでした。
そうした自身の育児体験を通じて芽生えた「母親たちの“困った”場面を支える仕組みが必要」という強い思い、そして保育士としての経験を請われて、延岡市地域子育て支援センターの開所に備えて、主任として迎えられました。
以来、延岡市の地域子育て支援の中核を担う存在として、たくさんの親子に寄り添っています。
3つ子の子育ては、保育士であった小澤さんにとっても大変なものでした。
小さく生まれたお子さんは入退院を繰り返し、ある時ひとりがオレンジ色の液を吐いてしまいました。病院に連れて行くにも夫は仕事で出張中。当時は車も無く、赤ちゃん3人を一緒に連れ出すことができません。あちこち電話をかけ、何とか助けてくれないかと相談しても「どうしようもない」との答えばかり。その時、バスが通り掛かったので外に出ると、ご近所の方がそこに居て、赤ちゃん二人を預かってくれ、無事に小児科へ行くことができました。この経験から「困った時に誰かがいてくれたら」と強く感じるようになりました。
そんな無我夢中の子育てをしていた小澤さんに、仕事の話が舞い込みました。平成11年、3つ子ちゃんは4歳の誕生日が目前になっていました。声を掛けたのは、延岡市法人立保育園協議会の会員である園長先生たちでした。仕事の内容は、市域を一本にまとめる子育て支援センターで専従職員として働かないかというもの。子育て中の母親たちのSOSに応えられる窓口となる重要な施設に関われるというものでした。
まだまだ小さい三人の子育てもあり、仕事との両立に自信がなかった小澤さんでしたが、依頼のあった約1ヶ月前に他界した父からの「人の役にたつ仕事をしなさい」という言葉にも背中を押され、延岡市で初の試みとなる地域子育て支援センターで働くことを決断しました。
延岡市地域子育て支援センターは、使われなくなった児童館を活用し、職員は小澤さんひとりでのスタートでした。センターを構想された園長先生たちは、新たにNPO法人延岡市子育て支援協議会を立ち上げ、準備を進められました。
育児中であることに対しては、働きやすいよう配慮してくださいました。また、オープン準備を進めていると、「何が始まるの?」と母親たちが様子を見に訪れ、説明するうちに利用希望者が集まって、お手伝いもしてくださいました。さらに、市内の保育園からのお手伝いもあって、専従職員がひとりであっても安心して取り組めました。
こうして誕生した『おやこの森』には、毎日のように親子が自由に訪れます。小学4年生ぐらいの子も親と同伴で遊びに来ます。また、ふたごさんの集まりなど、いろいろな親子サークルが自主的に活動しています
普段は「見守る」というスタンスをとっていますが、子育て中の親には余裕がなくなることもあり、命に関わる事態も想定されます。親からのSOSにはすぐにスタッフが駆けつけられる体制も整えています。「いちばん大事なのは、そばに誰かが寄り添うこと。それで何かの支えになれば」と考えています。
平成27年、『おやこの森』は、開設から15年目を迎えました。
現在、子育て支援センター事業をはじめ、病児、病後児保育、ファミリーサポートセンター、つどいの広場、育児用品のリサイクル、子育て家庭支援員訪問、保育サポーター派遣等の事業を行っています。また、企業で働く母親に子育て関連制度の話をしたり、学校の命の講座を受け持ったり、ひとりひとりをサポートする事業姿勢から、さまざまな取り組みを具体化しています。
職員は5名に、ボランティアは200名近くに増えました。
ボランティアをかって出てくださるのは、『おやこの森』を利用されていた方や、地域の人達です。子どもが中学生に成長された母親が台風の後の片付けに来てくださったり、保育サポーターの養成講座を修了されて小学校や児童クラブへのお手伝いに行かれる方もいます。
『森のボランティア』のみなさんは、風のように来られて、虫博士・看板作り・読み聞かせや・歯科相談など、自然な形で親子さん方に向き合っていただいています。
『おやこの森』は多くの方達によって支えられています。
「自然な形で子育てを応援していきたい」
ここを訪れた皆さんが元気になって家庭へ戻ってもらえれば。
これからも訪れる一人ひとりを大切にしていくことを一番に考えて、活動していく決意です。
延岡市子育て支援センターの広場には坂村眞民氏の詩碑があります。
この詩に、思いが凝縮されているので紹介します。
『あとからくる者のために』
あとからくる者のために
田畑を耕し
種を用意しておくのだ
山や川を海を
きれいにしておくのだ
ああ あとからくる者のために
苦労をし我慢をし
みなそれぞれの力を
傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
みなそれぞれ自分にできる
何かをしてゆくのだ
タンポポ堂 眞民
この方と直接会って、経験談やアドバイスを聞くことができます。